健康志向の高まりとともにプロテインの需要が急速に増加しています。プロテインは、筋肉の強化や運動後の回復をサポートするだけでなく、日常の栄養補給にも最適な成分です。
特に、植物由来のプロテインは環境にも優しく、持続可能な選択肢として注目され、大豆たんぱく(ソイプロテイン)はその代表例であり、必須アミノ酸をすべて含む高品質なたんぱく源です。
ソイプロテインの利用方法とその健康効果について、不二製油の大豆たんぱくのスペシャリスト、たんぱく素材開発室の武田さんと細川さんにインタビューしてきました。
インタビュアー:ソヤファームクラブ 程
大豆たんぱくとは?
程:初めに、大豆たんぱくとは何ですか?
細川さん:大豆たんぱく(SPI:Soy Protein Isolate)は、大豆から抽出された高純度のたんぱく質です。大豆の約35%はたんぱく質であり、他の穀物に比べて非常にたんぱく質が豊富です。大豆たんぱくは、体内で合成できない必須アミノ酸をすべて含む、アミノ酸スコア100の植物性たんぱく源であり、肉や乳製品に匹敵する栄養価を持ちます。また、環境にも優しく、持続可能なたんぱく源として注目されています。
武田さん:国内では大阪府泉佐野市にある阪南工場で、海外では中国天津市にも工場を有しており、厳しい品質管理のもと生産しています。
大豆たんぱくはどんな食品に使われているの?
程:大豆たんぱくはどんな食品に使われているのですか?
細川さん:多岐にわたり利用されています。例えば、ハムやソーセージ、プロテインドリンク、育児用粉乳、流動食などです。加工食品メーカー(ハム・ソーセージ・水産物)、飲料メーカー、健康食品メーカー、コンビニエンスストアなどが主要な取引先です。また、最近では乳原料を使わないプラントベースのチーズやアイスクリームのコク出しにも使われています。
程:シェイカーでシャカシャカ振る「プロテイン」のイメージが強かったのですが、ハム・ソーセージは意外でした。
細川さん:実はハム・ソーセージでの利用の方が長く、いわゆる栄養補助食品として直接飲む「プロテイン」の方が歴史は浅いです。不二製油は創業から70年以上、大豆たんぱくを製造していますが、たんぱく質摂取目的の「プロテイン」として広く使われるようになったのはここ20年ほどです。ダマとなって溶かし難く、味や口当たりも悪かったところが、加工技術の進歩とともに飲みやすさ・おいしさが格段に向上したため、普及しました。
程:継続的な努力の賜物ですね。では核心かもしれませんが、ずばり不二製油のソイプロテインは何がすごくて日本国内で生産量1位となっていると思いますか?
細川さん:一番の強みは大豆臭が少なくすっきりとした風味の良さと、粉末の分散性が良いことです。これにより、スポーツ用のプロテインドリンクとしても飲みやすく、さまざまな食品にスムーズに混ぜ込むことができます。味の良さももちろん大事ですが、納品先の工場で使いやすいかどうか、こちらも重要なポイントです。今も新製品・新ラインで採用いただくときは緊張します。実験室での検証通り、とばかりは行きませんからね。
武田さん:品質が安定しているのも強みです。例えば製品の粘度が振れると流動食などでは細いチューブから出すので大きな問題になります。安定した品質が保たれているのは製造を担当している生産部の努力のおかげだと思います。そして様々な製品に使われている、ということはメーカーのお客様からの依頼事項も異なるということであり、細かに対応できているのは担当する営業のおかげです。ユーザー様からは不二製油は安心感がある、と言われますが、お客様からのご要望に対してこれからも皆で力を合わせて細かに対応し、更なる市場拡大を狙っていきたいですね。
~こぼれ話~
不二製油では大豆たんぱくだけでなく、調製豆乳粉末や大豆ペプチド、副産物のオカラを利用加工した水溶性大豆多糖類、大豆ホエイも製品としてあります。聞き慣れないかと思いますが、大豆ペプチドは吸収性の優れたたんぱく素材としてスポーツ分野を中心に使われています。大豆多糖類は様々な機能を持ち、乳酸菌飲料の沈殿抑制、麺や米飯のほぐれ性付与、メレンゲ等の泡保持効果などがあります。大豆ホエイは、土壌改良剤、肥料、飼料用途としても利用が広がっています。
大豆たんぱくだけでなく、副産物も活かしてトータルで環境保護やアップサイクルに貢献できているのは不二製油ならではなんですね!
大豆ペプチドに関するインタビュー記事は近日公開予定!
開発裏話
程:大豆研究70年以上という話でしたが、開発者として携わる中での苦労点はどんな所でしたか?武田さん:新しい市場への挑戦は常に困難を伴います。不二製油では、若い世代のアイデアを取り入れながら、異業種との交流を増やし、新たな利用用途を模索しています。製品の品質向上には、高分子であるたんぱくの構造を改質させ、目的とする性質に誘導させるわけですが、加工操作は無数に考えられ、そのために多くの検討が必要で、1製品の開発には長いものでは2-3年の長期的な取り組みが求められます。市場の変化は非常に速いので、解離しないようスピード感と危機感をもって日々努力しています。

細川さん:不二製油の製品がユーザー様の新商品に採用されるとき、特に自分が開発に携わった製品が上市されたときの喜びはひとしおです。実験室、パイロットプラント、そして最終的工場でテスト生産と少しずつスケールアップして開発を進めます。何度もラボやパイロットプラントで繰り返し検討しますが、それでも工場でのスケールアップによる予測不可能な事態に直面した時には、とっさの問題解決力や決断力も必要とされ、エキサイティングかつチャレンジングでやりがいのある仕事です。
武田さん:最近で言えば、たんぱく入りスムージーに採用された時の達成感は格別でした。新しいソイプロテインの一歩を切り開いた、と感じた瞬間でした。
程:お店に並んでいるのを見たら嬉しいでしょうね。どんな人が買っているのか観察したり…笑
武田さん:そうそう!次の提案コンセプトを考えるためにもね。(笑)
大豆たんぱくの未来

程:大豆たんぱくの用途や開発の大変さをうかがってきましたが、今後どのように広げていきたいなど野望があったら教えてください。
細川:大豆たんぱくの栄養価の高さと環境への配慮から、今後も市場の拡大が期待されます。特に東南アジア市場への進出を目指し、Japan品質の安心感を武器に、育児用粉乳や高齢者食などの健康食品市場での利用を推進していきたいですね。また、酸性飲料用の大豆たんぱく製品も不二製油独自の商品があるので、広げていきたいです。酸性なので、すっきりと飲めるし、果物の味付けも違和感なく飲めるのがメリットです。簡便に栄養を摂取できる製品の提供を目指しています。
武田さん:不二製油は、これからも進化を続け、大豆たんぱくの先駆者として市場をリードしていきます。
不二製油の大豆たんぱく素材は、品質と技術力で市場を牽引し続ける存在です。今後も新たな挑戦を続け、より多くの人々にその価値を届けていきます。
程:大豆たんぱく生産量日本1位であり続けるだけでなく、新市場に向けた新製品を開発し続けるという熱い思いを感じました。ありがとうございました!